日本でも登録数が増え、関心の高まる「世界遺産」。単なる旅行先としてだけではなく、歴史やカルチャー、自然を学ぶ切り口にも、興味のきっかけにもなる、素晴らしいスポットです。いずれ訪れてみたいと思っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんな「世界遺産」のうち、より希少価値が高いことで注目される「複合遺産」についてご紹介します!筆者は「世界遺産検定1級」合格者でもあり、渡航国は100ヵ国以上に上りますので、出来るだけ広い視野の解説を心掛けました。
「複合遺産」は、海外旅行の渡航規制が大幅に緩和されたことで、「久しぶりの海外旅行」の旅先としてもとてもおすすめ。子連れのアドベンチャー旅行、リフレッシュのための休暇、トレッキングなどアクティブな体験にもぴったりです。老若男女問わずwithコロナに安心できる旅先はとても貴重ですね!
世界遺産とは簡単にいうとどんなもの?日本にもある?
まず簡単に「世界遺産」と、その中でも「複合遺産」はどんなもの?という疑問について触れていきます。登録基準も、とってもシンプルに解説しますね。
やっぱりマチュピチュ!?有名な「複合遺産」といえば
「複合遺産」と聞いても、いったい何が複合なの?と思われる方もいると思いますが、「複合遺産」とはあくまでも「世界遺産」のうちのひとつの区分です。
イメージが湧くよう実際に登録されている複合遺産を挙げますと、トルコの「カッパドキア」&「パムッカレ」、ペルーの「マチュピチュ」、オーストラリアの「ウルル」(エアーズロック)、ギリシャの「メテオラ」などが当てはまります。
どの遺産もとても有名で、マチュピチュやカッパドキアは「一生に一度は絶対に行きたいランキング」や「世界の絶景ランキング」でも常連ですね!
「文化遺産」と「自然遺産」登録の理念
「世界遺産」に登録されるためには、専門的な調査機関に認められ、国際会議での審議がなされ、様々な段階・課題をクリアしなければなりません。ただ、あくまで世界遺産登録の理念は、たったひとつです。
それは対象が、文化財、景観、自然であるにかかかわらず、「人類が共有すべき“顕著な普遍的価値”をもつ」 という事!
そんな理念を掲げる「世界遺産」は3種類に大別され、まずは「世界文化遺産」と「世界自然遺産」とに分けられます(単に文化遺産・自然遺産とも)。そして「世界文化遺産」と「世界自然遺産」両方の特徴・価値をもつ遺産こそが、「複合遺産」として分類されるという仕組みです。
英語では「mixed」まざりあう価値と世界初の登録
「複合遺産」は英語では「Mixed Heritage」と表現されています。自然遺産としての価値と文化遺産としての価値が「まざりあっている」遺産という様子がよく伝わりますね。
ちなみに世界初の複合遺産は、1979年に登録されたグアテマラの「ティカル遺跡」。自然と文化財ともに高い価値が認められた、マヤ文明最大の古代都市と密林が感動的な複合遺産です。隠された謎の遺跡という雰囲気もあり、アドベンチャーが好きな人におすすめの魅力的な遺産ですよ!
「複合遺産」の数は?日本にはある?
世界遺産に承認される過程で専門機関の調査がありますが、自然遺産と文化遺産ではその機関が異なり、「登録基準」も違います。自然遺産は本部がスイスの「IUCN」、文化遺産は本部がパリの「ICOMOS」が調査し、両者により価値を認められた遺産のみが「複合遺産」と指定されます。
尚、日本では世界遺産が合計25件登録されており、そのうち文化遺産は20件、自然遺産は5件。よって、残念ながら日本には、複合遺産は存在しません。世界的には1154件の登録があり、文化遺産897件、自然遺産218件、複合遺産39件。世界中を見ても、複合遺産はわずか3%に過ぎず、希少性が高いということがよくわかる数ですね!
登録基準をわかりやすく解説!
世界遺産の「登録基準」は全部で⑩あり、文化遺産=文化財の基準は①~⑥、自然遺産=自然・景観の基準は⑦~⑩が該当するという仕組みになっています。この登録基準をごく簡単に説明すると以下のようになり、これらの特性のうち①~⑥および⑦~⑩から1つずつ、計2つ以上に該当したものが「複合遺産」として認められます。
【文化遺産】
① 人類の最高傑作
② 文化の交流を示す
③ 特定の文化・文明の証拠
④ 優れた建築様式・技術
⑤ 環境との関わりを示す
⑥ 伝統・思想・信仰の芸術
【自然遺産】
⑦ 重要な美しさ
⑧ 地球の歴史・地理
⑨ 生物の進化・生態系
⑩ 絶滅の恐れ・保護
これらの基準は、「優劣をつけるためのもの」と考えてしまうと、人間のエゴのように感じさせてしまいますね!ですが世界遺産は「その価値にのっとり、適切に保護すること」が目的で登録されています。
つまり「複合遺産」は、確かに登録割合としては希少性がありますが、これは「他の遺産に比べて価値がある」という意味ではありません。
「複合遺産」はそうではない遺産よりも、「文化的価値」と「自然的価値」をバランス良く保護し、両方の価値を損ねないための保存方法を、多角的かつ長期的な視点で検討する必要がある。より難しく、より慎重になるべき遺産である、ということを示しています。
【ヨーロッパの複合遺産一覧】-7件
それでは世界中に散らばる複合遺産を、エリアごとにご紹介していきます!
簡単な資料として、マップに番号を振りましたので、その順に記載して行きます。ちなみにヨーロッパには7件の複合遺産がありますが、トルコをヨーロッパに含める場合はプラス2件になります。区分はあまり厳密ではなく、今回はマップ上の見やすさで分けてあります。
①メテオラ
【ギリシャ】 1988年/登録基準①②④⑤⑦
複合遺産を知る時にはその「登録基準」を気にすることも、面白味をアップさせてくれる要素になります。たとえば①は「人類の最高傑作」、⑦は「重要で美しい自然」です。この①と⑦が揃う遺産は、やっぱり迫力がある、と思えます。また筆者が個人的に好むのは⑤です。これは人類と環境の遺産になり、「集落」が対象になることが多いです。日本で言えば「白川郷」が該当します。
そして「天空の修道院」メテオラ。ここは①⑦⑤が揃う、類まれな自然環境と人類の傑作からなる複合遺産です!6000万年前に出来上がった断崖の地形、その頂上に建つ世俗から切り離された修道院の姿が荘厳。
現在でも6つの修道院が稼働しており入場可能ですが、聖地のためマナーを守って見学しましょう。外側の厳しさから一転、修道院の中は和やかな中庭の空間が広がり印象的。ちなみに映画007のロケ地でもあり、ドラマのゲームオブスローンズでも使われている絶景の複合遺産です!
②アトス山
【ギリシャ】 1988年/登録基準①②④⑤⑥⑦
ギリシャ正教の一大聖地。標高約2000m、入域に制限があり手つかずの自然と森に包まれた、「聖山アトス」です。885年にビザンツ帝国からの自治を認められ、以来1000年以上の伝統を紡いでいます。ここは修道院のため女性は入れませんが、男性は「入域許可書」があれば入域可能です。アクセスは船のみで、女性も船からの見学ならOK。
「伝統」と「不平等」は時に切り離せず、素晴らしい複合遺産である一方、女人禁制については議会からの批判も出ています。ちなみに、日本の世界遺産「沖ノ島」も伝統的に女人禁制の島でしたが、遺産登録を期になんと「男性も禁止」になりました。これは「沖ノ島」のアイディア勝ちかも、なんて思います!
③オフリド地域の自然・文化遺産
【北マケドニア・アルバニア】 1979(1980)年/登録基準①③④⑦
美しい湖に美しい教会群。一見なぜ複合遺産なのだろう?というほどの、のどかな一帯ですが、登録対象の「オフリド湖」は、ロシアのバイカル湖やアフリカのタンガニーカ湖と並ぶ「世界最古の湖」であると同時に、ヨーロッパでもっとも古くから人が定住した場所のひとつと言われています。
現在残る建築物は11世紀以降の聖堂が多く、湖畔の「聖ヨハン・カネオ聖堂」はオレンジ色の建物がブルーの湖に映えてとても素敵です。北マケドニアは小さな国なので、首都から簡単にアクセスでき、ギリシャからも行けます。
④モン・ペルデュ(モンテ・ペルディド)
【スペイン・フランス】 1997年/登録基準③④⑤⑦⑧
フランスとスペインにまたがるピレネー山脈。そのほぼ中央に位置する「ペルデュ山」は、標高3352mの高山です。夏にはハイキングや登山で気軽に訪れることができ、貴重な野生動物の生息も見られます。
フランス語では「モン・ペルデュ」ですが、スペイン語では「モンテ・ペルディド」と呼ばれ、「迷子になった山」「孤立した山」という意味。スペイン側は深い渓谷を有することで知られ、よりローカルな雰囲気を残し、今やほとんど行われなくなった放牧も行われます。こうした山の伝統的な暮らしを含めて複合遺産として保存されています。
⑤イビサの生物多様性と文化
【スペイン】 1999年/登録基準②③④⑨⑩
イビサというと、毎夜盛り上がるクラブの爆音、パリピとダンスの聖地!そんな夜の顔を持った島ですが、一方で美しいリゾート地や複合遺産としての歴史的価値も大いに注目され、そのギャップにも面白味があります。
歴史を紐解けば、イビサは現在のチュニジアにあった「カルタゴ」が築いた紀元前8世紀ごろの植民地。地中海の覇者フェニキア人が地中海貿易の拠点とした都市が起源です。旧市街は迷路のような家並みが広がり、初期の城壁も残っています。周辺は地中海の特色ある多くの海洋生物と、多様な生態系が見られ、複合遺産となりました。
⑥セント・キルダ
【イギリス】 1986(2005)年/登録基準③⑤⑦⑨⑩
英国本土から180㎞の海洋にある「セント・キルダ諸島」。孤立した島々ですが、2000年以上前の遺跡が発見されており、非常に厳しい環境の中で人が暮らしていた証拠が残っています。周辺は荒れた海で、島民は19世紀末になっても外界と自由にコンタクトは取れませんでした。近世になって生活が変わり1930年に島民は移り住むことに。
無人になった島々は現在、絶滅危惧種を含む海鳥の繁殖地になっており、約100万羽もの鳥たちの貴重な営巣地として保護されています。これにより島々の全域が世界遺産登録されたため、年間の上陸数に制限があり、アクセスは困難な複合遺産と言えます。
⑦ラポニア地域(サーメ人地域)
【スウェーデン】 1996年/登録基準③⑤⑦⑧⑨
ラポニア地域は、サーメ人(サーミ人)が伝統的に住むエリアを指します。正直な表現をすれば、彼らはヨーロッパでは長らく差別の対象であり、「ラップ人」という蔑称で呼ばれていました。近代では「同化政策」の対象となり、苛烈な扱いを受けていましたが、こうした政策は世界中どこでも凄惨なもので、日本も他人事ではありません。(興味がある方は映画「サーミの血」を参考にどうぞ!)
サーメ人はヨーロッパにおける北方先住民族であり、驚くべきことに日本のアイヌ民族とも交流があったとされます。5000年前からの伝統的な狩猟をし、トナカイとともに定住をしない生活を営んできました。差別というフィルターを外した時、そこにあるのは厳しくも美しい自然と共存する人々の叡智。この複合遺産は、これらすべての自然と歴史とを記録し保存するものです。
【アジアの複合遺産一覧】-11件
アジアの複合遺産は11件。西アジアの中東エリアまで含んでいます。アジアからヨーロッパに至るまでの大陸では、変化に富んだ地形や気候、自然環境、生態系、そこから生じる多様な文明や文化のすべてが魅力的です。
①ロックアイランド群と南ラグーン
【パラオ】 2012年/登録基準③⑤⑦⑨⑩
パラオはかつて日本に統治されていた歴史があり、少し意外ながら非常に親日の国。パラオにはもともと姓がありませんでしたが、外国からの影響にさらされて姓を名乗るようになり、なんと苗字が「イチロー」さん「ヒロコ」さん、というような人が多数います。またハンガーはエモンカケ、パンツはサルマタと呼び、ベントーもありますよ!行くと必ず好きになる国です。
そんなパラオの美しい海域は、火山によって生じた445の島々からなり、海洋生物や鳥類の宝庫として知られる貴重な複合遺産。また淡水、海水、汽水からなる湖も特徴的で、「ジェリーフィッシュレイク(クラゲの湖)」は、あまりに平和なため毒がなくなったクラゲが住んでいます。一時数が激減しましたが、近年復活を見せたようで嬉しく思っています。
②泰山
【中国】 1987年/登録基準①②③④⑤⑥⑦
オーストラリアの複合遺産「タスマニア」と並び、もっとも多くの登録基準を満たす世界遺産です。泰山はそもそも「道教」以前の古代神話の時代からの信仰を受け継ぐ聖山。「道教」においては信仰対象の「五岳」のうち、生死を司る東岳大帝(泰山府君)が祀られるもっとも重要な聖地です。また秦の始皇帝から2000年以上、歴代の皇帝が「封禅」という儀式を行った場でもあります。
このため泰山は、松をはじめ多くの植物が見られる豊かな山岳でありながら、多くの宮殿・廟などの建築物が建てられ、ふもとから頂上まで約9㎞およそ7000段の石段が続く、壮大な景観の複合遺産となっています。ちなみにバスで行く場合ターミナルが中腹にあるため3000段はショートカットできます!
③黄山
【中国】 1990年/登録基準②⑦⑩
泰山が信仰の山だとすると、対する黄山は風光明媚で知られる山です。この山の特徴は「黄山の四絶」という言葉に凝縮され、これは怪石・奇松・雲海・温泉の4つの絶景を指しています。海からの湿った空気からなる雲海が断崖絶壁の峰々を覆う景観は、幻想的でもあり感動的。古来より中国でも大変愛された山です。
また高い山、断崖、雲海…その上に住む人、それは「仙人」です。実際に中国の伝説の王が不老不死の霊薬を飲み、仙人になったという伝説があり、その舞台が黄山であると言われています。以来多くの文人の憧れでもあり、水墨画や詩の題材になり、それが日本にも伝わって、今なお漫画などに出てくるのですから面白いですね!古代人も現代人も惹きつけられる複合遺産です。
④武夷山
【中国】 1999年/登録基準③⑥⑦⑩
この武夷山もまた、黄山(と桂林)に並び、中国が誇る名勝の複合遺産。ちなみに武夷山という山があるわけではなく、黄崗山という山を中心にした一帯の名称で、複数の川や渓谷、丘陵や崖を含み、正確には「武夷山脈」ということになります。このうち特に美しいと言われる「九曲渓」は、まるで山水画のよう。
また一帯は亜熱帯のため「世界でもっとも昆虫が豊富」な場所でもあり、朱子学の祖にゆかりある文化財が多い場所でもあります。その上お茶の名産地としても有名で、この地で作る烏龍茶は「武夷岩茶」として特別な地位を得ています。最高級茶葉(大紅袍の原木・現在生産なし)は、20g/18万元、つまり現在価格300万円以上で落札されたというのですから驚きです!
⑤峨眉山と楽山大仏
【中国】 1996年/登録基準④⑥⑩
中国は四川省、内陸の山岳地帯に位置し、レッサーパンダやゴールデンキャットなど絶滅危惧種の生息が多く認められるエリアです。聖地として手つかずの自然が残る一方、中国というのは東へ行くほど山と尾根が入り組んでおり、峡谷で川の流れが激しいポイントがあります。楽山大仏はこうした川の事故・水害防止の祈願として掘られたもの。
「世界最大の摩崖仏(石仏)」で、川を前面に、崖を背に掘られた71mの巨大な仏像はまさに圧巻!脇の階段がいつか壊れるのでは…という恐怖もありますが、そのご尊顔の柔らかい表情はとても印象的です。遊覧船に乗って川からの見学もおすすめで、見ごたえのある複合遺産です。
⑥チャンアンの景観関連遺産
【ベトナム】 2014年/登録基準⑤⑦⑧
3万年以上かけて変化し続けた地形が生んだ、切り立った崖や渓谷、そして数百の洞窟や鍾乳洞が密集するエリア。洞窟には壁画等が残され、考古学的価値も認められています。川もまた特徴的で、湿原のように底が浅く平らで、流れもゆるやか。小舟で行けば、水面に浮かぶように点々と建てられた寺院が美しく、その穏やかさと背後の険しい崖の風景のコントラストが印象的です。
またベトナム王朝のはじまりとも言われる古都ホアルーも併せて複合遺産として登録されています。川と水路に囲まれた要塞でもあり、寺院や集落、素晴らしい水田地帯も残っています。アジアの複合遺産で基準⑧「地球の歴史・地理」に関わる価値が認められているのはここだけ。「桃源郷」の雰囲気を保存したかのような遺産ですよ!
⑦カンチェンゾンガ国立公園
【インド】 2016年/登録基準③⑥⑦⑩
インド・シッキムのヒマラヤ山脈にある複合遺産。実際はネパールとの国境にあり、ネパール語ではカンチェンジュンガと呼ばれています。チョモランマ(エベレスト)、K2に次いで、世界第三位の標高8586m。渓谷、湖、氷河が多くあり、高山の希少な動物や植物も生息しています。
文化的な側面としては、シッキムの先住民の崇拝対象という点で認められ、複合遺産となりました。ヒマラヤは「世界の屋根」とも言われ、その景観は言葉で表現できないほど美しく、過酷で、神々しいです。このエリアに住む民族にとっては、信仰や崇拝の対象であると同時に畏怖の念を抱かせる存在です。
⑧イラク南部の湿原地域:生物多様性の保護地域とメソポタミアの都市の残存景観
【イラク】 2016年/登録基準③⑤⑨⑩
イラクは戦争のイメージが先行してしまう国ではありますが、人類の起源に遡るほどの歴史を有する大国です。かつてメソポタミアの「肥沃な三日月地帯」の中心地であり、旧約聖書にもあるユダヤ教・キリスト教・イスラム教の始祖アブラハムが産まれた地であり、大都市にて学問の中心バグダッドがあった国でもあります。
特に古代文明を紐解こうとする時に重要視される「シュメール文明」。このシュメール文明の古代都市遺跡ウル、ウルク、テル・エリドゥと周辺の「アフワル」と呼ばれる湿地帯が、複合遺産として承認されました。ティグリス川とユーフラテス川の育む湿地は「世界最大の内陸デルタ地帯<」であり、この地の生物の育成を助けています。
⑨ワディ・ラム保護区
【ヨルダン】 2011年/登録基準③⑤⑦
ワディ・ラムはヨルダンの砂漠地帯に位置する複合遺産。考古学的価値が高く、一帯からは1万年に及ぶ人類の遺物が発見されており、その量は岩面彫刻25000、碑文20000点以上に及びます。また後の時代になると同国の文化遺産「ペトラ」と同様、砂漠の遊牧民族ナバテア人が往来したエリアでもありました。
同時にワディ・ラムは、アラビアのロレンスなど多くのロケ地になったことでも知られています。その赤い砂丘と、連なる岩山の影は美しく、まるで火星にでも来たかのような景観。近年ではキャンプ(テント泊)も浸透してきていますので、宿泊も心配ありません。夕日の時間帯などは特におすすめ。イチオシ複合遺産です!
⑩ギョレメ国立公園およびカッパドキアの岩石遺跡群
【トルコ】 1985年/登録基準①③⑤⑦
トルコもまた親日で、日本人にとって気軽に訪れることのできる国のひとつ。このカッパドキアは数ある複合遺産の中でも特に有名な観光スポットでもあり、知っている方や行かれた方も少なくないのではないでしょうか。その特徴はというと広範囲に林立する「奇岩」で、きのこのような岩がユニークな景観を生み出しています。英語では「妖精の煙突」とも呼ばれており、可愛いですね!
およそ300万年前の火山が起因となって形成された岩々に、3世紀頃から迫害を逃れたキリスト教徒が移り住むようになります。岩を掘って洞窟の教会や修道院を造り、壁画で彩り、ピーク時期には360もの岩窟聖堂が存在したと言われます。また最深部は地下10階に及ぶ「地下都市」もあり、見どころに尽きません。チャンスがあれば気球もおすすめ!感動の風景が広がりますよ。
⑪ヒエラポリス-パムッカレ
【トルコ】 1988年/登録基準③④⑦
カッパドキアと同様、トルコで人気の観光地でもある複合遺産。パムッカレはカッパドキアよりも古く、紀元前2世紀のローマ人の築いた都がありました。「テルマエ・ロマエ」という漫画・映画で「古代ローマ人は温泉好き」とご存じの方もいるかもしれませんが、パムッカレはその証明とも言える遺跡のひとつ!最盛期には人口1万以上を有し、浴場、劇場、聖堂まであった一大温泉保養地でした。
パムッカレの幻想的な風景を生み出す真っ白な石灰棚は、実は温泉水の成分に含まれる石灰分で形成されています。青空の下で雪景色のような景観も素敵ですが、ピンクに染まる夕暮れ時もロマンチック。近年は湧出量が減っており、複合遺産としての保護のためにも現在は湯量をコントロールしています。温泉につかりたい場合は「アンティークプール」利用がおすすめですよ!
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