この記事では、エチオピアの古都「ゴンダール」と、世界遺産「ファジル・ゲビ」をご紹介します!
エチオピアはあまり日本には馴染みのない国ではありますが、アフリカ大陸の中でも非常に個性的な文化・伝統を保持している国です。サハラ以北のアラブ圏とも他のアフリカ圏とも違った魅力を放ち、文化の面だけでなく、雄大な自然もまた迫力があります。
そんな見どころに尽きないエチオピア。筆者が訪れた国の中でも、こんなに「濃い」国、というのは中々ないと思っています。この記事で興味を持っていただけたら嬉しいです!
またご紹介する「ゴンダール」は素晴らしい文化財とあわせて、某有名ジブリアニメのモデル?という可能性を秘めていますので、ぜひとも身近に感じてくださいね。
エチオピアの歴史とキリスト教
エチオピアはスゴイ国!地図と場所
実はエチオピアという国はかなりすごいんです。歴史というとヨーロッパ・中東地域に意識が寄ってしまいがちですが、エチオピアは現存する世界最古の独立国のひとつとも言われています。
特に強大な力を持ったのが1世紀頃から。当時は現代の「エリトリア」や「スーダン」の半分ほどまでを支配していましたので、「紅海」に面しエジプト~アラビア半島~インドまで貿易網を広げたことで、非常に強大で富のある国を築きました(この頃の遺跡は「アクスム」として別途世界遺産に)。
エチオピアの地理的な強みというのは面白いもので、エジプトがローマに敗れても、ローマの力が失われても、大きな影響は受けませんでした。その後のイスラム勢力やオスマン帝国と対峙した時代には、アフリカの内陸に移動することで存続。
この頃は孤立し力を弱めたものの、キリスト教の伝統を守り、ヨーロッパや地中海エリアとの接触を継続しました。13世紀になると「エチオピア帝国」として再興し、17世紀になって首都をゴンダールに定めて発展します。
「ゴンダールのやさしい光」
またエチオピアは4世紀になると早々にキリスト教(コプト正教会)を受容します。これは世界の中でも非常に早く、なんとローマよりも前のこととされます。このキリスト教がエチオピアの中で独自に変容し「エチオピア正教」として発展。1500年経った現代にも、その伝統は守られています。
そんなキリスト教の精神が根付いたエチオピアを描く絵本として、「ゴンダールのやさしい光」という作品が知られていますのでご紹介を。実話がベースになっており、貧困と隣人への愛のストーリーです。心に響く作品ですので、興味のある方はぜひ手に取ってみてくださいね。クリスチャンの方や、お子さんにもおすすめの絵本です。
尚、「ゴンダールのやさしい光」は2001年の出版で、描かれた時代より時が経ち、現在はエチオピアも前進しているように感じますよ!農村と都市の格差はいまだ深刻ですが、それでも首都アディスアベバは整備され都会になり、地方は世界遺産も一役買って個性的な観光地として注目を浴びています。
ゴンダール様式の世界遺産「ファジル・ゲビ」と天使
世界遺産「ファジル・ゲビ」の建造物
世界遺産「ファジル・ゲビ」はゴンダールにエチオピア帝国の首都が置かれた際の、王宮群が立ち並ぶ丘を指します。17~18世紀の建造です。
初代ファシリデス皇帝の居城からはじまり、皇帝が代わるごとに宮殿が建てられ、帝国の急速な発展とともにファジル・ゲビも拡充されていきます。居城の他にも、3つの教会、図書館、ホール、厩舎、宴の館なども建てられた複合施設となり、周囲は城壁で囲まれ、いくつもの城門が設置されました。
ゴンダール様式とは
ファジル・ゲビの建造物は「ゴンダール様式」と呼ばれ、独特の建築様式を持つことで有名。このゴンダール様式とは、エジプト/スーダンのヌビアの様式、アラブ/イスラム建築、インド建築のデザインを基盤として、あとにイエズス会の宣教師が持ち込んだバロック建築からの影響も受けているという、非常に独自性の高い建造物です。
これらはもともと他民族国家であり、独自の進化を遂げるエチオピアを象徴するような存在です。そうした文化的価値が認められたことでファジル・ゲビは1979年に世界遺産として登録されました。
インパクト大!旧約聖書の天使
またゴンダールには多くの聖堂が残っていますが、これらも非常に独特。もともと教会内部の絵は「文字が読めない人にでも分かるように」と描かれたものです。
ただ、ゴンダール「デブレ・ベルハン・セラシエ聖堂」の壁画・天井画はその域を超え、一度見たら忘れらないほどのインパクト!エチオピア美術の最高傑作とも言われ、他には無い存在感と美しさですので、ぜひとも訪れてみてくださいね。
ちなみにここに描かれているものの正体を明かしてしまうと、旧約聖書にある「ケルビム」=天使です。天使たちはすべてを見ている、神の力はすべてに向いている、そうした意図を持つ絵です。
ケルビムは日本語では智天使と訳されますが、キリスト教の中でも少々異彩を放っている存在のように感じます。なぜならケルビムは「体が無い」のが定説だからです(もしくは「体を隠している」)。メソポタミアの古い神話がルーツとも言われていますので、まだ混沌にあった初期のキリスト教を思わせ、それがより魅力的です。
ゴンダールはラピュタのゴンドア?ソロモン伝説
旧約聖書のソロモン王伝説
冒頭よりエチオピアの歴史に触れましたが、その起源は一説には3000年もの歴史を有しているとされます。エチオピアは、長い「エチオピア帝国」時代をさかのぼり、その前身とも言える「アクスム王国」の更に前より続く、とある伝説があります。
それは、エチオピアは旧約聖書に登場するソロモン王とシバの女王の血を引く国であるという伝説です。このソロモン王とシバの女王のストーリーは必ずしも荒唐無稽な作り話というわけではなく、旧約聖書だけでなくクルアーンやその他の歴史的書物にも2人の親交が記されています。
このシバが現代のどこの国を指すのかというのは、証明する術がなく未だ答えは出ていません。ただエチオピアでは、シバの女王は当時このエリアを支配した「マケダ女王」であり、ソロモン王との子がエチオピアの起源として古く語り継がれています。
ゴンダールとラピュタ「ゴンドア」の類似
ゴンダールは旧約聖書にかかわる伝説・伝承がいまに残る稀有な土地です。そもそもソロモン王とは誰かというと、巨人兵士「ゴリアテ」を倒したことを契機としイスラエル王に即位した「ダビデ」の息子です。
実は、ジブリアニメ「天空の城ラピュタ」もまた旧約聖書にかかわる表現が多いことをご存じでしょうか。
たとえばムスカの乗っていた船は「ゴリアテ」ですし、「ソドムとゴモラ」も出てきます。またラピュタそのもののビジュアルは「バベルの塔」をモチーフにしていると考えられます。
その点から言っても、またシンプルにその名称から言っても、ラピュタに登場する「ゴンドア」のモデルは、ここ「ゴンダール」でもおかしくないというのが筆者の見解です!筆者オリジナルの「ラピュタ解釈」にご興味があるジブリ好きの方は以下をどうぞ♪
日本からの行き方とアディスアベバ
歴史、土地風土、宗教に伝説…。様々な角度から魅力のあるエチオピア・ゴンダールと世界遺産ファジル・ゲビ。以下からは実際の行き方をご紹介します!
日本からの飛行機は直行便がある
日本からエチオピアまではなんと直行便があります。「エチオピア航空」なら(途中テクニカルストップでソウルに1時間ほど止まる場合がありますが)、直行で首都アディスアベバまでひとっ飛び!
アジアやヨーロッパの航空会社を利用することも可能ですが、乗り換えなしの直行便は楽な上に早いですので、やっぱり「エチオピア航空」がおすすめですよ。所要は約15時間半です。
アディスアベバからゴンダールへの飛行機
アディスアベバからゴンダールへは同じく「エチオピア航空」の国内線利用で約1時間。毎日就航がありますが、スケジュール上アディスアベバに1泊しなければならないケースもあります。
国際線からそのまま国内線へ乗り継ぎする場合、公式の乗り継ぎ最小時間は1時間。ただし入国審査での万一のトラブルを思うと最低2時間からが無難だと思います。
ちなみに陸路の場合はバス・車になりますが、片道12時間以上かかります。飛行機がなければ、エチオピアの内陸というのは秘境中の秘境です。道路も必ずしも整っていない場合がありますので、時間の面でも、体力の面でも、そして安全の面でもフライトがおすすめです。
ただ、本当に物好きな方にはバスも良いと思います。エチオピアは本当に独特です。時間感覚も世界基準と違います。バスの出発時間はだいたい「日の出」。席を取るのも一苦労。バスに乗車するだけで「混沌」を感じられるのはエチオピアだけです笑
英語が通じる?気温は?観光のヒント
ゴンダールの標高と気温
エチオピアはエリアによって大きく気候の異なる国です。アフリカ大陸に位置し、赤道に近い土地でありながら、「気温が低い」ことで知られています。
というのもエチオピアは国の中央部から北西にかけては山が連なり、首都アディスアベバは2300m以上、ゴンダールで2100m以上の標高。夏でも過ごしやすいことで観光客にも人気があります。
ただ逆の言い方をしますと、エチオピアはエリアや標高、シーズンによって気温や天候が大きく異なります。ゴンダールも標高のため昼夜の温度差には注意が必要。服装は着脱できるものでこまめに調整することをおすすめします。
英語はエチオピア観光で通じる!
エチオピアの代表的な言語は「アムハラ語」。その他アファル語、オロモ語、ソマリ語、ティグリニャ語が公用語として認められています。他民族国家ということもあり、第二言語として英語はその話者が多いです。
観光のためのコミュニケーションはもちろん、世界遺産の遺跡、お店、レストランやホテルでも英語は通じることが多いですよ。エチオピア人は人懐っこく陽気な人も多く、その辺を歩いている人が気軽に話しかけてくる、というようなこともしばしばあります。
ファジル・ゲビ周辺ホテルと食事
数は少ないですがゴンダールにはホテルがありますので、世界遺産「ファジル・ゲビ」の近くで宿泊も可能です。星のつくホテルが数軒、あとはゲストハウスがいくつか。ローカルさを楽しみたい場合はゲストハウス、セキュリティやリラックスを重視する場合は★3~4ホテルがおすすめ。
尚、エチオピアといえばそのもっともたる特徴のひとつが「食」!いける人にはいけますが、ダメな人は本当にダメ…というローカル料理「インジェラ」。ぜひお試しください。ただ洋食風のカフェやイタリア料理の店もありますので、あまり心配しないでも大丈夫です!
おまけ ゴンダール観光にプラス!周辺の世界遺産や滝も
バハルダールと青ナイルの滝
世界一長い川、ナイル川。実はナイル川の主要な源流のひとつがエチオピアの「タナ湖」です(もうひとつはウガンダの「ヴィクトリア湖」)。タナ湖から発した流れを「青ナイル」、ヴィクトリア湖~ノ湖からの流れを「白ナイル」と称し、これらがスーダンのハルツームで合流、砂漠を超えてエジプトを貫き、最終的に地中海に注ぎます。6,000㎞以上の壮大な川の旅です。
そんなタナ湖は、ゴンダールから車で1時間ほどの距離。ただせっかくそこまで足を延ばすのであれば、おすすめはさらに3時間ほど南下した「青ナイルの滝」です。「ティシサット」または「ティスアバイ」とも呼ばれ、ナイル源流の大迫力の滝を見ることができますよ!タナ湖の湖畔「バハルダール」とあわせて訪れるのもおすすめ。
最初の世界遺産!シミエン国立公園
「シミエン国立公園」は1978年に世界遺産として初めて登録された12件のうちのひとつ。ゴンダールからは約2時間、「アフリカの天井」とも称される高山が連なる自然遺産です。
エチオピアの最高峰ラス・ダシェン山(4620m)をはじめ、連なる山々は厳しくも美しく、一方で希少な動植物の楽園です。絶滅危惧種も多く生息する、重要な保護エリア。地殻変動や浸食で形成された岩々も特徴的で、絶景が広がります。
エチオピア人の故郷アクスム
本記事でも何度か名前が出ています古都「アクスム」。ゴンダールから車で約6時間、エチオピアの最北部に位置します。アディスアベバからはフライトもあります。
エチオピアにとっての起源でもあり、世界遺産にも登録される重要な古都という位置づけです。特徴的な遺跡としては「ステッレ」と呼ばれるオベリスク(巨大な石の柱)が残っており、これは墓標として機能したものとされています。
驚異の世界遺産!岩窟教会ラリベラ
エチオピアというとこの世界遺産を連想する人もいるかもしれません。ゴンダールより6時間半、空港はありアディスアベバからフライトも可。
「世界遺産ラリベラ」は、岩をくりぬいて作られた岩窟教会として知られる、エチオピア正教会の教会堂群。建造は12~13世紀とされますが、そのインパクトは絶大。他には無い、目を疑うよな光景が待っています。一生に一度は訪れてみたい世界遺産のひとつです!
まとめ ゴンダール様式は一見の価値あり
いかがでしたでしょうか。
様々な側面から見どころの多い、ゴンダールの魅力が少しでも伝われば何よりです。
ゴンダールやファジル・ゲビは、建築がお好きな方や興味がある方には特に面白味を感じると思いますし、キリスト教関連や歴史好きにもたまらないエリアと言えます。アフリカ大陸のエジプトやスーダンより更に南に、このようなキリスト教の伝統を持つ国があるのはとても不思議ですよね。
と同時に、ゴンダールは未知との出会い、新鮮な感動、そうした旅そのものの根源を十分に満たしてくれる場所でもありますよ。
また、エチオピアはこれ以外にも本当に見どころの多い国で、世界を見渡してももっともディープな国のひとつだと思います。
今回ご紹介したゴンダールやラリベラはエチオピアの北側ですが、東へ行けば「エルタアレ火山」「ダナキル砂漠」など地獄のような風景に出会え、西から南へかけて行けば「ムルシ族」「カロ族」「ハマル族」など美しい民族に出会えます。筆者は「バンナ族」推しです。
また猿人の「ルーシー」の化石や、アフリカで唯一ほぼ独立を保った話、エチオピアコーヒー、ジャマイカのラスタとの関連、美男美女が多い話、まずいイタリアご飯ネタなど、魅力を挙げたら尽きません。世界遺産も全部で9件登録されています。
いつもと少しだけ違う旅を求める方には、ぜひともおすすめしたい、エチオピアです!
新しい時代の旅に、お役立ち情報は以下をどうぞ♪
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